BOAC FLT911 ②

今回は、BOAC911便事故の「事故を解明したもの」について

 

 

事故を解明したのは乗客の8ミリカメラのカラーフィルムだった

前回触れましたが、事故機の正確な飛行経路はわかっていません。しかしこの事故では、乗客が機内で撮影していた8ミリカメラが回収されました。8ミリカメラといっても、平成の初期にあった8ミリのビデオカメラではありません。8ミリカメラのカラーフィルムには、離陸時の羽田空港丹沢山塊、山中湖が写っており、山中湖は81コマ写されていました。その山中湖は墜落現場の近くです。その直後フィルムは2コマ跳び、機内の座席、カーペットなどと思われるものが流れるのを写して終わっていました。

このフィルムの1コマ毎の写真から飛行経路や速度、高度、突風に遭遇した位置、機体の受けた突風荷重が推定されました。そして、調査チームはフィルムが2コマ跳んだことに注目、カメラを使用した衝撃試験が行われたのです。その結果、カメラに7.5G(重力の7.5倍)の衝撃(加速度)を0.007秒間加えるとフィルム送りに同じ変調が起き、事故時と同じフィルム送りが再現されたのです。

事故機の構造強度は、事故時の推定飛行状態(重量と速度)で、水平状態では主翼が6.4G程度、もし左か右に10度傾いた状態だと4.6G程度で破壊。胴体は下方5.6G程度、側方4.1G程度の荷重で、垂直安定板は約75ノットの横突風、水平安定板は約133ノットの下向き突風でそれぞれ破壊することがボーイング社の資料から算出されました。

7.5Gは体重が7.5倍に感じられる加速度です。事故機は御殿場市上空で突然異常に激しい乱気流(突風荷重)を受け、この突風で機体各所に破壊が発生、破壊は短時間のうちに進行し、約10,000m(約1分)の飛行の間に機体は空中分解したと推定されました。乗客のカメラから判明した7.5G、それは設計制限荷重を大幅に超える突風荷重だったのです。

※突風荷重 飛行中、突風に遭遇した航空機の機体(主として翼)にかかる空気力。

 

 

7.5Gと言われてもピンとこないと思います。僕の体重が約50㎏だとすると、375㎏に感じる加速度です。その重さの物が僕の身体に乗ったら… 0.007秒(1秒よりも短い!)であっても僕が耐えることは不可能です。事故機の事故時の重量は推定11万2500㎏、どのような力がかかったのかイメージできると思います。

 

 

つづく