内緒話①

かなり古い昔話。僕が某大手企業で、とあるお仕事をしていた時の話です。

 

 

仕事柄移動が常であり、業務によっては離れた場所に宿泊することがありました。宿泊には専用の宿泊場所があり、これらの施設は通常、子会社や関連会社が管理しています。そこの従業員は、この某大手企業を定年退職後に再雇用された方や出向で来られている方でほぼ構成されています。

 

 

あまり表現はよくないのですが、僕たちのような現役の本体社員とこのような子会社の方とのお付き合いというか繋がりはほとんどなく、鍵の受け渡し程度しかないので接点もありません。なので、関係がとても希薄でした。

 

 

そんな中で、当時若かった僕は(笑)、このような「おじさん達」にもきちんと挨拶し、礼儀正しく接していました。だってね、このおじさん達が設備をきちんと管理しているからこそ宿泊できるんですから。

 

 

よく自動販売機で飲み物なんかを買ってきて「おじさ~ん、いつも本当にありがとうございま~す」って感じで管理人室へ立ち寄ってたんですね。なので、こんな僕を可愛がってくれる方もいました。

 

 

ある日の、ある場所でのこと。いつものように「おじさ~ん…」って差し入れを持っていつもよく会う管理人さんのところへ行ったんです。そうしたら、

 

 

「Takaくん、ちょっと話があるんだけど、後で部屋へ来てくれないか…」

 

 

おじさんの様子が変なので、一旦宿泊部屋へ入って荷物を整理し、すぐに管理人室へ戻りました。「何かあったのかなあ…僕がいつも立ち寄ってたから会社に怒られたのかなあ…」なんて心配したのを今でもよく覚えています。

 

 

「実はね…」とおじさんが話し始めたことは…

 

 

話を要約すれば、「誰も我々に思いやりを示してくれなかった中で、若い君だけがいつも誠意をもって私に接してくれたことが本当にうれしくて、いつも感謝していた」こと、「君がまだ未婚で彼女もいないことは知っていた。君のような善良な人には実にもったいないことだと思っていた」こと、そして、「君にぜひ紹介したい女性がいる、君だからこそ安心して紹介できる、ここ〇〇(某地方都市)の女性だがとてもいい人なのでぜひとも君に紹介させてほしい」というお話でした。

 

 

驚きましたね。たった一本のお茶、たった一つのお土産のお菓子…そんないつもの差し入れがこんな形で返ってきたんです。

 

 

そのお話を聞いた以降、そのおじさんとは会わなくなりました。関連会社の方だったので事情はすぐに分かるのですが、間違いなければ雇用契約の終了です。多分、おじさんは自分がその月に契約終了による退職が決まっていた、その日が僕と会う最後の日であった、そして、そのおじさんはその最後の日に僕へ恩返しをしようとした、のでしょう。

 

 

僕たち昭和世代(僕と同じかそれより前の方は特に)にはこのような情というか素敵な縁・繋がりがあり、ギブ&テイクではないけれど、受けた恩はいつか必ず返そうという心を持っていたんです。本当に人間味のある人が多かったんですよ。

 

 

批判やマイナスイメージ的なことを書きたくはないのですが…

 

 

時代が悪くなれば人も悪くなるのはある意味仕方のないことだと思いますが、一人一人が今一度自分自身をしっかりと見つめなおさなければいけない時に来ていると思うのです。これからも時代なり世の中はますます悪くなっていきます。それに流されるのか、それとも、自分をしっかりと持って生きていくのか…。

 

 

僕は、かつて面倒をみてくれたり、思いやりを示してくれた、そんな縁のある人が悩み、もがき苦しんでいるときに、それに対して知らぬふりをし、見捨てて他の人のところへ行くような最低の人間には絶対になりたくない。悩み、もがき苦しんでいる、かつての縁者がいることを知っている中で、遊び惚けるようなレベルの低い人間にも絶対になりたくない。

 

 

昭和の、このような情のある、人間味のある人であり続けられるように僕はこれからも精進します。